歯科の医療広告ガイドラインの基本。広告に当たるか・禁止される広告・限定解除
公式サイトやSNSの発信は医療広告に当たるか、何が禁止され、自由診療は何をそろえれば載せられるか。厚生労働省のガイドラインと医療法をもとに、院長・事務長向けに、判断例と禁止される広告・限定解除の一覧つきでまとめました。

この記事の要点
- 医院のサイトやSNSも、3要件を満たせば医療広告として規制される。
- 体験談・最上級の比較・誇大な表現は、禁止される広告に当たる。
- 自由診療を載せるときは、費用・期間・回数と主なリスクもそろえる。
先に結論:3つの順で確かめる
この記事は、公式サイトやSNSなどで発信する歯科医院の院長・事務長が、厚生労働省の医療広告等ガイドライン(医療広告ガイドライン)で何が決められているかの全体像をつかむためのものです。発信する内容は、次の3つの順で確かめます。
- 広告に当たるか:受診を誘う意図があり、医院が特定でき、歯科医業や診療所に関する内容か
- 禁止される広告に当たらないか:虚偽、比較優良、誇大、患者の体験談、誤認させるおそれがある術前術後の写真など
- 広告できる事項か:法令で決められた事項の範囲か。範囲外なら、限定解除の4つの要件を満たしているか
この記事は、ガイドラインと医療法の公式資料をもとにした情報整理です。個別の表現が法令に適合するかを判断するものではありません。判断がつかない表現は公開せずに保留し、院長が判断するか、自治体の医療広告の相談窓口で確かめます。
1本の説明文や投稿を公開する直前の確認項目は「説明文・SNS投稿を公開する前の確認項目」、更新ごとに誰が作業し誰が承認するかは「医院情報の更新の分担」の記事で扱っています。
広告に当たるかの3要件
ガイドラインでは、①患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性)、②歯科医師の氏名や医院の名称などが特定できること(特定性)、③歯科医業や診療所に関する内容であること、の3つをすべて満たすものを医療広告と判断するとしています。
媒体の名前ではなく、内容で判断します。広告に当たる媒体の例には、チラシ・看板・新聞や雑誌のほか、Eメールやインターネット上の広告等が挙げられています。医療機関のウェブサイトは、平成29年に成立した医療法等の改正(平成29年法律第57号)で、ほかの広告媒体と同様に規制の対象になりました。
| 情報の例 | 広告に当たるか | 理由・条件 |
|---|---|---|
| 公式サイト・医院のSNSアカウントでの発信 | 3要件を満たせば当たる | 媒体ではなく内容で判断する。医院が自らのウェブサイト等に載せる、治療等の内容・効果に関する体験談は広告に当たり、そのうえで禁止される |
| 「これは広告ではありません」と書き添えた、医院名入りの紹介 | 当たる | 書き添えても、医院名などが記載され、実質的に3要件を満たせば広告として扱う |
| 費用を負担して掲載を依頼した記事(記事風広告) | 当たる | 新聞や雑誌の記事は通常は広告に当たらないが、費用を負担して掲載を依頼した記事風広告は規制の対象 |
| 広告と気付かれないように行う宣伝(ステルスマーケティング等) | 当たる場合がある | 医院が広告料などを負担して掲載を依頼しているなど、実質的に3要件を満たす場合は広告として扱う |
| 患者や一般の人が個人のSNSや口コミサイトに書いた体験談 | 通常は当たらない。ただし、医院の依頼・謝礼・費用負担がある場合や、医院の経営に関わる人の家族等が医院の利益のために投稿したと認められる場合は当たる | 自分の意思で書いたものは誘引性がない。ただし、医院からの依頼にもとづく場合、医院が謝礼を渡した・約束した場合、費用を負担して掲載を依頼している場合、医院の経営に関わる人の家族等が医院の利益のために投稿したと認められる場合は、誘引性があるものとして扱う |
| 院内の掲示、院内で配るパンフレット | 通常は当たらない | 受け手が、すでに受診している患者等に限られるため |
| スタッフの求人広告 | 当たらない | 職員の採用が目的で、受診を誘う意図がないため |
医療法第6条の5第1項は「何人も」と定めており、ガイドラインでは、歯科医師や医療機関だけでなく、広告代理店、アフィリエイター、患者や一般の人も規制の対象になるとしています。依頼を受けて広告を企画・制作する業者も、違反があった場合は、依頼した側とともに指導等の対象となり得るとされています。制作会社やAIが作った原稿でも、公開するのは医院の発信です。
出典:厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)」(令和8年3月30日最終改正)、厚生労働省「医療法における病院等の広告規制について」、e-Gov 法令検索「医療法」
禁止される広告の種類
広告に当たる情報では、次の種類の広告をしてはいけません。虚偽広告は医療法第6条の5第1項で、比較優良広告・誇大広告・公序良俗に反する広告・患者の体験談・誤認させるおそれがある術前術後の写真は、同条第2項と医療法施行規則第1条の9で禁止されています。最上級の表現など、事実であっても禁止されるものがある点に注意します。
| 種類 | 内容 | ガイドラインの例 |
|---|---|---|
| 虚偽広告 | 内容が虚偽にわたる広告。罰則付きで禁止されている | 「絶対安全な手術です!」、加工・修正した術前術後の写真、根拠・調査方法を示さない「〇%の満足度」 |
| 比較優良広告 | ほかの医療機関より優れていると示す広告。最上級の表現は、客観的な事実であっても禁止される | 「日本一」「No.1」「最高」、著名人との関係を強調する表現 |
| 誇大広告 | 必ずしも虚偽ではないが、事実を不当に誇張したり、人を誤認させたりする広告 | 「比較的安全な手術です。」、条件付きの値段だけを大きく示した費用、科学的根拠に乏しい情報で特定の手術を勧めるもの |
| 公序良俗に反する広告 | 公の秩序や善良の風俗に反する内容の広告 | わいせつ・残虐な図画や映像、差別を助長する表現を使ったもの |
| 患者の体験談 | 患者の主観や伝聞にもとづく、治療等の内容・効果に関する体験談を、受診を誘う目的で紹介するもの | 体験談の内容が広告できる範囲であっても認められない |
| 誤認させるおそれがある術前術後の写真 | いわゆるビフォーアフター写真のうち、患者を誤認させるおそれがあるもの | 術前または術後の写真やイラストだけを示し、説明が不十分なもの |
| 広告できる事項以外の広告 | 法令で広告できるとされた事項以外の広告(限定解除の要件を満たす場合を除く) | 「専門外来」の表記、死亡率・術後生存率等 |
このほか、表の禁止される広告とは別に、ガイドラインは品位を損ねる内容の広告として、費用を強調した広告(「今なら〇円でキャンペーン実施中!」「期間限定で〇〇療法を50%オフで提供しています」など)や、「無料相談をされた方全員に〇〇をプレゼント」のように医療の内容と直接関係のない事項で誘う広告を、行うべきではないとしています。これらは法令で禁止される表の種類とは区別されますが、院内では公開前に書き換える対象にします。景品表示法や医薬品医療機器等法など、ほかの法令の規制を重ねて受けることもあります。
投稿案の表現をどう直すか(書き換える・説明をそろえる・保留する)と、術前術後の写真を載せる条件は、「説明文・SNS投稿を公開する前の確認項目」の記事で判断例とともに扱っています。
出典:厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)」(令和8年3月30日最終改正)、e-Gov 法令検索「医療法」
広告できる事項と限定解除
禁止される広告に当たらなくても、医療広告では、医療法第6条の5第3項と厚生労働省の告示で広告できるとされた事項(診療科名、医院の名称・電話番号・所在地、診療日・診療時間、提供する医療の内容など)以外は、原則として広告できません。
ただし、患者が自ら求めて入手する情報については、次の4つの要件をすべて満たすと、広告できる事項の限定を解除し、ほかの事項も広告できます(限定解除)。③と④は、自由診療の情報を示す場合の要件です。
- 医療に関する適切な選択に役立つ情報で、患者が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトなどであること
- 患者が容易に問い合わせできるよう、問い合わせ先(電話番号・Eメールアドレス等)を書くこと
- 自由診療について、通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する情報を示すこと
- 自由診療について、治療等の主なリスク、副作用等に関する情報を示すこと
インターネットのバナー広告や、検索サイトで費用を払ってスポンサーとして上位に表示されるものなどは、①を満たさないとされています。
③では、治療の名称や最低限の内容・費用だけを紹介せず、通常必要とされる治療内容、標準的な費用、治療期間と回数を示します。標準的な費用が明確でない場合は、通常必要とされる治療の最低金額から最高金額(発生頻度の高い追加費用を含む)までの範囲を示すなど、できる限り分かりやすく示します。③の情報は、リンク先の別のページに置いたり、利点に比べて極端に小さな文字で載せたりしません。④では、利点や長所だけを強調せず、主なリスクや副作用も分かりやすく載せます。
限定解除の要件を満たしても、虚偽・比較優良・誇大・体験談などの禁止される広告は認められません。
出典:厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)」(令和8年3月30日最終改正)、e-Gov 法令検索「医療法」
違反が疑われたときの流れ
ガイドラインは、都道府県・保健所設置市・特別区が行う指導等の手順を参考として示しています。個別の事例に応じて対応するもので、次の手順に限られるものではないとされています。
- 任意の調査:広告の内容について、医院に説明を求めるなどの調査が行われる
- 行政指導:違反が確認されると、通常はまず広告の中止や内容の是正を求められる
- 報告命令・立入検査:任意の調査に応じない場合などに行われる(医療法第6条の8第1項)
- 中止命令・是正命令:行政指導に従わない場合や、違反を繰り返す悪質な場合に、期限を定めて命じられる(同条第2項)
- 告発・公表:虚偽広告で行政指導に応じない場合や、命令に従わない場合などには告発が考慮される。命令や告発を行った際は、原則として事例が公表される
虚偽広告(医療法第6条の5第1項の違反)や、中止命令・是正命令に従わない場合などには罰則があります(医療法第87条など)。悪質な違反広告には、管理者の変更命令や開設許可の取り消しなどの行政処分も考慮すべきとされています。
指摘を受けてから直すのではなく、公開前の確認と、公開済みのページの見直しを院内の作業に組み込みます。
出典:厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)」(令和8年3月30日最終改正)、e-Gov 法令検索「医療法」
自院で直す・業者に確認する・保留する
ガイドラインに照らして気になる表現が見つかったら、誰が原稿を作り、誰が掲載先を管理しているかと、院内で判断がつくかで次の行動を分けます。
- 自院で直す:医院が更新できる公式サイトやSNSで、体験談・「No.1」などの最上級の表現など、禁止される広告の種類に当たると分かる表現は、削るか事実だけの説明に書き換える。「今なら〇円」のような費用の強調は、禁止される種類ではなくガイドラインが行うべきではないとする表現だが、同じく条件をそろえた説明に書き換える
- 今の業者に確認する:制作会社や広告代理店に更新や広告の運用を任せているページ・広告。どの表現を、いつまでに、どう直すかを伝えて依頼し、直った後に患者が見る画面で確かめる
- 保留する:広告できる事項に当たるか、限定解除の要件を満たすかなど、院内で判断がつかない表現。推測で公開せず、院長が判断するまで下書きのまま残す
判断に迷うときは、医院の所在地を担当する都道府県・保健所設置市・特別区の医療広告の相談窓口に相談できます。窓口の一覧は厚生労働省が公表しています。ウェブサイトでの具体的な事例は、厚生労働省の「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)」にまとめられています。
出典:厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)」(令和8年3月30日最終改正)、厚生労働省「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)」(令和8年3月作成)、厚生労働省「各都道府県、保健所設置市及び特別区における医療に関する広告の窓口一覧」
出典・編集について
- 厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)」(令和8年3月30日最終改正) ↗確認日:
- 厚生労働省「医療法における病院等の広告規制について」 ↗確認日:
- e-Gov 法令検索「医療法」 ↗確認日:
- 厚生労働省「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)」(令和8年3月作成) ↗確認日:
- 厚生労働省「各都道府県、保健所設置市及び特別区における医療に関する広告の窓口一覧」 ↗確認日:
本記事は情報整理のためのガイドで、法的・医療的助言ではありません。制度、広告表現、各サービスの仕様は、公開時点の公式情報と医院の実情に合わせてご確認ください。
更新履歴
- :写真・図を追加しました。
- :厚生労働省の医療広告等ガイドライン(令和8年3月30日最終改正)と医療法で内容を確かめ直し、広告に当たるかの判断例、禁止される広告の種類、限定解除の4つの要件、違反が疑われたときの流れ、自院で直す・業者に確認する・保留するの分かれ目を追加しました。出典と確認日を示し、公開前の確認項目・更新の分担の記事への案内を加えました。